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日雇い作曲家の日記〜2020.11.05-11.11
11月5日
根無し草
この10年くらい根無し草的な音楽を作ろうと抗っていたけれど、なんだか虚しくなりつつある。日本人の自分が西洋音楽の歴史に寄生しているように思えて、ルーツ的なものから離れようとしていたけれど、中途半端な奇形ポップスしか出来なかった。その姿勢が謙虚だったのか傲慢だったのか、もうよくわからない。理由はいろいろあるが、自分の音楽を形にできなかったのは才能が無いということだ。気がついたら自分の嫌いな創作料理屋になっていた。
11月6日
住宅地
住宅地を散歩する。枯れた蔦が絡まるトレリス、日陰の狭い隙間に植えられた発育不良の薔薇、剪定されていないオリーブの鉢、家の中から追い出された観葉植物。諦められた丁寧な暮らしを見て回る。
11月7日
ドラ1対決
今年の楽天ドラフト1位の早川くんとヤクルトドラフト1位の木澤くんが早慶戦で登板すると聞いて、須田さんと神宮球場へ。慶応出身の須田さんからしたら慶早戦か。以前、神宮野球大会を観に来た時はアルコール販売があったのだけど、今日の試合ではアルコール販売は無いらしい。昭和の時代、早慶戦でスタンドの学生同士で乱闘になったというのを教えてもらって「そのせいだったりするのかね?」なんて言いながら素面で真剣に観戦する。
11月8日
息子の弁当
息子の弁当。いつも「男だなあ」と、笑いながら作っている。
11月9日
ルーツ
先日の自己肯定感を取り戻す夢が後を引いている。仕事が暇なときにこんな気分になるのは本当に危ない気がして、自分自身を心配している。ルイス・ボンファの“Tristeza”を聴く。90年代に流行った “Tristeza”とは違う曲。おかげでこういう音楽が聴けるようになった。
11月10日
最終戦
今シーズン、最後の神宮球場。思ったよりは寒くなかったけど、日が落ちてからはさすがにビールを飲む気にはなれず、コンビニで買ったプラの焼酎を常温の水割りで飲む。試合内容はというと、昨年の甲子園のスター奥川君にとってはほろ苦いデビューになってしまったけれど、来年はこれが良い思い出に変わるような、素晴らしい活躍を期待している。オフシーズンになったので、僕も音楽に取り組もうかな。
11月11日
戦力外通告
野球がオフシーズンに入ると、選手の戦力外通告のニュースが出てくる。プロの世界は厳しいなあと思いつつ、そういえば自分も11月に入って、ほとんど仕事していない。恐ろしや。
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執筆者:橋本 竜樹 / ハシモト・タツキ
de.te.ri.o.ra.tion主宰、Deterio Liber発行人。