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Where Are You Going? 〜第四回 nakayaanの音楽紹介コラム〜

前回はPunPunCicleによる紹介コラムでした。第四回はnakayaanによるコラムです。

エチオピアのコーヒー
コーヒーを毎日飲みます。何事にもせかせかした性分なので、ホットコーヒーを啜っている瞬間が唯一安らぎを感じる時間かもしれません。

ステイホーム期間に『おいしいコーヒーの真実』というエチオピアのコーヒー農家の窮状を訴える2006年のドキュメンタリー映画を見ましたが、貿易って現代の奴隷制かな? というくらいの構造的な不条理にへこみました。何気なしに先日カルディで購入した期間限定の豆の産地をちらっと見たらエチオピアでした。豊かな風味と爽やかな酸味でとても美味しいです。でもフェアトレードの豆ではなかったので、エチオピア農家に入るお金はへたしたら1円以下でしょう。

そんなこんなで、個人的にエチオピアに目が向いたのを何かの縁として、今回はエチオピアの音楽を紹介できたらと思います。見事にオリジナリティを発揮し、長い時を経ても輝き続けるエチオピア音楽の存在は、搾取される農家の方々の希望となっている事も(ごくまれに)あるかもしれません。

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Mulatu Astatke / Mulatu


エチオピアをレペゼンするアーティストといえばこの人、ムラトゥ・アスタトゥケ。60-70年代にバークレー等で学んだジャズやラテン音楽の知識や技術を母国エチオピアに持ち帰り独自の音楽を追求した結果、彼の音楽は「エチオ・ジャズ」というジャンルとして広がりを見せます。彼の曲は一貫して”洗練された猥雑さ”を感じさせるもので、割と前回のガボール・ザボにも通じるところがあるかもしれません。ヴィヴラファン奏者としても本当に好きです。ジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』でも非常に格好いい使われ方をしているので必見です。




Hailu Mergia / Hari Meru Meru


ムラトゥ・アスタトゥケとの共演もしていた鍵盤奏者のハイル・メルギアによる、Awesome Tapes From Africaからの85年発掘作『Hailu Mergia & His Classical Instrument: Shemonmuanaye』より。ボスッというリズムマシンの音がまず最高ですが、エチオピア伝統を感じさせる旋律の鍵盤フレーズはかなり気持ちいいです。エチオピアのポップスは日本の演歌と似ているというのは民族音楽好きの間では案外有名な話らしく、聞くと本当にコブシをきかして歌っていてびっくりするのですが、メルギアの鍵盤のメロディもどことなく演歌感があります。このアルバムが非凡なのはリズムマシンの単調さと、コードとメロディの抑揚のなさ(単体でみたらあるけど基本反復なので)から、浜辺でじっと寄せては返す波を眺めているような気持ちになってくる所です。桃源郷度高めなので、瞑想好きのあなたにおすすめです。

おまけ
今回はエチオピア編という事で「エチオピア・料理・レシピ」で検索しましたが、ハードルの高いものしか出てこなかったので、これは無理や、と逃げの一手で今回は中目黒の「クイーン・シーバ」という老舗エチオピア料理屋さんに行ってきました。

写真の巻かれた灰色の物体がインジェラというエチオピアの主食でして、「雑巾」と揶揄されることもあるらしい、味にクセがあるとされる発酵食品なのですが、エチオピアのシチューであるワット、中でもチキンのレッドペッパーシチューであるドロワットとの相性は非常に良く、美味しくいただけました。
店内にはアフリカの民芸品や絵、皇帝の写真等がたくさん飾ってあったり、エチオピアのダンスミュージックのMVがひたすらYouTubeで流れてたりして楽しいので、ワールド好きのあなたにおすすめです。



執筆者:nakayaan(ナカヤーン)

ミツメのベーシスト。2014年に11曲入りのアルバム『EASE』をリリース。以来不定期にライブ活動を行いつつ、2017年にはフリーダウンロードで『Кин – дза – дза! / Orgy of the Dead』, 『Death Proof』の2作をリリース。2019.12.11には初の7inch vinylであり最新作の『immigrant / proslava』をリリース。

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